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歯と爪

歯と爪(1955年発表) D・S・バリンジャー 2001 創元推理文庫

まず第一に彼は、ある殺人犯人に対して復讐を成し遂げた。
第二に彼は殺人を犯した。
そして第三に彼は、その謀略工作のなかで自分も殺されたのである。

以上、プロローグより抜粋


歯と爪


勘のいい人というか、ある程度ミステリを読み込んでいる人は、主人公リュウの仕掛けた犯罪の概要は、ピンと来るものがあるだろう。多分それは、間違っていないと思われる。俺は大ビンゴだった。

だが、にも関わらず最後まで読ませるのは、バリンジャーの構成力による。いかにしてリュウは殺人事件に巻き込まれたか?そして、いかにして復讐を成し遂げたか。これを描くリュウの一人称の描写と、その復讐劇に纏わる法廷でのやりとりの三人称がカットバックで描かれている。

この法廷部分の描写が曲者でね、被告が誰なのかは最後まで明かされない。つまり、先の「ミステリ読みの勘」が正しいか否かは、クライマックスから結末を読まないと明かされないのだ。そしてクライマックス部分は袋とじにされている。これを開かず返品した場合は、出版社が返金に応じるという「読者への挑戦」が仕掛けられているのだ。

発表時の50年代はこういう手法が氾濫していたらしい。現代では、まさに温故知新。趣向を凝らしたギミックとして中々楽しめるものがある。一般的に読書家というものは、よっぽど難解あるいは大作で無い限り、途中で読むことを放棄したりはしないものだから、プロダクトとしても成功していると思う。ちなみに最近だと蘇部健一『ミイラ男』もこの手法を取り入れていたが、こちらは種明かしがビジュアルによっていた。

最後まで読むと、俺の場合、「あぁ、やっぱり」と思ったのだが、この安堵感が心地良い。洗練された文体(含む翻訳)と構成故の品の良さが、読後の充実感を与えてくれるのだろう。人を殺す理由とそこに生じるリスクを、善玉悪玉双方についてキッチリ抑え、しかもくどくないところが、大人の余裕。倫理を強調しながらも、過剰な情に流さない、「知の愉しみ」としての犯罪小説の洗練であると思う。
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